朝、目は覚めているのに体が動かない。

授業の準備をしなければと思うのに、プリント一枚が開けない。職員室を想像しただけで吐き気がする。それでも、「担任だから」「子どもを置いて休めないから」と、自分をベッドから引きずり出そうとしていませんか。

今日は学校へ行かなくて構いません。先にやるべきなのは、担任として踏ん張ることではありません。自分を、壊れた職場の論理から切り離すことです。

私は公立学校の正規教員として17年間働き、長時間労働と職場での理不尽な扱いのなかで心身を崩し、救急搬送され、うつ病になりました。うつ病で苦しむ方のお力になるべく書きました。

この記事では、うつで学校へ行けなくなった教師が、今日から自分を守るためにやることを3つに絞ってお伝えします。立派に説明するための記事ではありません。学校に飲み込まれず、生き延びるための記事です。

結論|先にやるのは、受診・記録・切り離しです

休職するのか。復職できるのか。退職するのか。異動できるのか。それは、今日決めることではありません。今日決めるのは、次の3つだけで十分です。

  1. 医師に、今の症状と職場で起きていることを隠さず伝える
  2. いつ、誰に、何をされたかを事実として残す
  3. 不調の原因になった人や職場と、直接つながらない条件を学校に求める

順番を間違えないでください。学校に理解してもらおうとするのは、そのあとで構いません。理解のない管理職に、弱り切った状態で自分の人生を説明しに行く必要はありません。

1.病院で「眠れません」だけで終わらせないでください

受診するとき、うまく話そうとしなくて構いません。ただし、「つらいです」「眠れません」だけで終わらせないでください。医師に渡せるよう、紙でも、スマホでもよいので、記録媒体に次のことを記録しましょう。

  • いつから眠れない、食べられない、起きられない状態なのか
  • 出勤、授業準備、職員室、保護者対応のうち、何ができなくなったのか
  • 長時間労働や業務の偏りで、どんな負担が続いていたのか
  • いつ、誰に、何を言われた・されたのか
  • その出来事のあと、体に何が起きたのか
  • 今、いちばん怖いことは何か

「会議でつるし上げられた翌日から眠れない」「あの管理職から電話が来ると動悸がする」「職員室へ入る直前に涙が出る」。このような言葉で構いません。むしろ、このような具体的な言葉が必要です。

診断書を頼むときは、療養が必要であること、勤務が難しい状態であること、職場にどんな配慮が必要かを、医師が書ける範囲で相談してください。診断書は、あなたが怠けているのではなく、治療が必要な状態にあることを学校へ示すためのものです。

2.「いじめられた気がする」ではなく、起きたことを残してください

職場で何かがおかしいとき、被害を受けた側ほど「自分の受け止め方が悪いのか」と考えます。だから記録が必要です。

記録は相手を攻撃するためだけのものではありません。自分が受けた扱いが常識の範囲だったのか、外れていたのかを、あとから第三者と確かめるためのものです。

残すこと書き方の例
いつ・どこで10月18日、16時10分、職員室
誰がいたかA教頭、B教諭、C教諭が同席
何を言われ・されたか「担任失格だ」と3回言われた
残っているものメール、チャット、会議資料、録音の有無
その後の体調帰宅後も眠れず、翌朝は起きられなかった

「あの人は最低だ」と書くより、「何月何日、誰の前で、何と言われた」と書いてください。怒りも悔しさも、もちろん本物です。しかし、事実を並べた記録のほうが、医師、家族、相談相手、必要になったときの第三者に伝わります。

メールやチャットは消さないでください。できれば日時が分かる状態で保存します。記録が途中で止まっても構いません。三日分でも、あなたが「気のせいではなかった」と確認できる材料になります。

3.学校には「休みます」だけでなく、「誰とつながらないか」を伝えてください

管理職に連絡するとき、長文で自分の正しさを証明する必要はありません。電話で泣いてしまうなら、メールで構いません。家族や支援者に横にいてもらっても構いません。

最初の連絡文

本日、医療機関を受診し、療養が必要との指示を受けました。診断書の提出方法と、今後の連絡窓口をご連絡ください。体調上、当面の連絡はメールでお願いします。また、○○さんとの直接の連絡や面談は難しいため、必要な連絡は管理職を通してください。

大事なのは最後の一文です。不調の原因になった人がいるなら、その人と直接話さない。電話を受けない。面談をしない。これは逃げではありません。あなたの心身をこれ以上壊さないための条件です。

学校から「一度だけ話せないか」「本人同士で解決できないか」と言われても、今のあなたが応じる必要はありません。話すことで状態が悪くなるなら、話さないでください。連絡経路を一つにし、誰が窓口になるのかを文面で残してもらいましょう。

引き継ぎを完璧にしてから休もう、と思わないでください

教師は、休むときまで子どものことを考えます。授業はどうするのか。支援が必要な子はどうなるのか。保護者には誰が説明するのか。だから限界を超えても、もう一日だけ、もう一週間だけと耐えてしまいます。

しかし、引き継ぎは学校組織の仕事です。あなたが倒れるまでに完成させる宿題ではありません。伝えられることだけを短く残し、残せないことは残せないと伝えてください。それで構いません。

復職・異動・退職は、回復してから考えればいいのです

「この学校に戻れるのか」「辞めたら終わりではないか」。その不安は当然です。しかし、眠れず、食べられず、学校を思うだけで体が固まる時期に、人生の答えを出そうとしないでください。

先に回復してください。次に、戻るなら誰と距離を置けるのか、業務をどこまで減らせるのか、通院を続けられるのかを確認します。それが整わないなら、異動や退職も含めて考えます。選択は一つではありません。

まとめ|あなたが今日やることは、学校を守ることではありません

今日やることは、三つだけです。

  1. 病院へ行き、症状と職場で起きたことを伝える
  2. いつ、誰に、何をされたかを事実として残す
  3. 学校に、療養と連絡方法、直接つながらない条件を伝える

教師である前に、あなたは壊されていい人ではありません。学校は代わりを用意できます。あなたの代わりの人生は、誰にも用意できません。

よくある質問

Q.教師がうつかもしれないと感じたら、まず何をすればよいですか?

A.眠れない、食べられない、朝に体が動かない、学校を考えると強い苦痛が出る状態なら、まず医療機関を受診してください。受診前に答えを出す必要はありません。症状、仕事への影響、職場で起きたことを、メモでそのまま伝えれば十分です。

Q.診断書を出すと、すぐ休職しなければなりませんか?

A.診断書を受け取った日に、休職・復職・退職まで決める必要はありません。まずは療養が必要な状態か、勤務を続けられる状態かを医師と確認してください。そのうえで、学校の手続きや連絡窓口を確認します。

Q.管理職や同僚が原因でうつになった場合、本人と話す必要はありますか?

A.話すことで体調が悪化するなら、直接話す必要はありません。例えば、校長が加害者の場合、副校長・教頭、主観教諭、学年主任などに療養が必要であることをを伝えてください。誰を連絡窓口にするのか、文面で残してもらいましょう。

Q.引き継ぎが終わらないと、休んではいけませんか?

A.いいえ。引き継ぎは学校組織で行う仕事です。療養に入る本人が、倒れるまでに完璧に仕上げるものではありません。伝えられる範囲で、授業の進度や配慮が必要な子どものことだけを短く残してください。まずは、ゆっくりと安心・安全な環境を確保することです。

Q.復職、異動、退職はいつ決めればよいですか?

A.心身が疲れ切っている時期に、人生の結論を急ぐ必要はありません。まずは休養と治療を優先してください。回復してから、元の職場で自分を守れる条件があるか、配置や業務量を変えられるか、通院を続けられるかを確認し、復職・異動・退職を比べて考えます。