こんにちは。先生のための働き方コーチ・平田洋典です。体育祭が1学期(前期)開催の場合、終了した学校も多いことでしょう。先生方お疲れ様でした。非日常的な学校行事が終わると日常に戻り、一時忘れていた悩みが頭に浮かび始めてきます。今回は、ある高校教師の悩みをもとに、「自分に合った職場」の考え方について述べます。
※なお、登場する教師等は架空の人物です。

公立高校に勤務するA先生は、高校生に数学の学問的面白さを教えたいと考えて高校教師になりました。しかし、初任者として赴任した勤務校は就職を目指す実業高校。生徒の学習意欲は低く、生徒の半数以上が寝ている日がほとんどという状況。A先生は、「自分にはこの学校は合わない」と思い、少しずつ教師としての熱意を失っていきました。

さて、A先生はどうなるのでしょうか。

人事異動で解決する方法が全てではない。目の前の生徒を伸ばす方法を見出すと、「合わない」と思っていた勤務校での日常に見え方が変わってくる。

このような状況を変える方法として真っ先に浮かぶのは、人事異動という方法でしょう。公立高校は数年単位で人事異動があります。異動で自分が理想とする授業ができる高校に異動すれば解決すると考えることもできます。しかし、そこにはある落とし穴があります。その点を明らかにして、一教師のみではなく、教育行政の問題点にも言及します。そして、現任校でA先生が生き生きと働くことにつながる姿勢、働き方について提案していきます。

人事異動を期待しながら勤務する際の心理状態

人事異動に関しては要綱が公開されている自治体がほとんどだと思います。しかし、曖昧な点も多く、更に希望通りの学校に異動できるとは限りません。このことについては多くの先生方が理解していると思います。それでもやはり、「次は希望の学校へ」という強い期待を持つのが普通だと思います。特に、「現任校が自分に合わない」と考えている場合は尚更です。

そのような考えは全く問題ないと思います。ただ、一点落とし穴があります。それは、「とりあえず異動できるまでは我慢、我慢」と、現状を満たされない態度で過ごすことです。そのようになると、無意識的に「今は、自分の最高のパフォーマンスを発揮することはできない。異動さえすれば・・・」と考えてしまうようになります。

無意識が、現状を分析し工夫して生徒に合った授業を研究・実践していく姿勢を阻止してしまいます。そうなると、A先生の「教師としての」成長は異動までの期間、鈍くなってしまいます(あるいは止まってしまいます)。

「進学校教師」という採用枠はない

A先生が希望しているのは進学校です。毎年、難関大学に100人以上が合格します。一方、現任校は先ほど述べた通り、学習意欲が高くない生徒が多い実業高校です。しかし、いずれも「高等学校」には変わりませんし、勤務している教師も採用枠は「高等学校教諭」です。したがって、「進学校教師」や「実業高校教師」ではなく、教師です。よって、現任校での創育工夫をしなければ、「教師」としての成長に陰りが見えてくるのは必然のことです。

「進学校教師」という意識を持つことの是非は問うつもりはありません。ただ、A先生はいずれにせよ、「生徒のために数学の面白さを!」という熱い想いを持った方です。そのような先生が成長の機会を失っていくのは、生徒にとっても損失だと思うのです。現任校の生徒にも数学の面白さを教える手段はあるはずです。そのことに気付くと、姿勢も変わってくるでしょう。では、そのためにどうすれば良いのか・・・?その前に、教育行政の問題に触れます。

教育行政が教師の意識も分断している

いくつかの自治体は、公募という形をとり、進学校等で「教科指導力のある」教師を一本釣りしています。確かに、生徒にとっては、自分たちの知的欲求を満たす教師に教えてもらうことが、重要度が高いことでしょう。そのために、進学校では指導実績のある教師は進学校を回り続けるということが起きます。これ自体は悪いことではありません。しかし、問題点が複数あります。

進学実績の高い学校をメディアが取り上げる

そのような学校の進学実績をメディアが「〇〇大学△名合格」などと取り上げることです。テレビのみではなく、雑誌までもが・・・。その雑誌は、電車の中刷り広告で宣伝すらされています。公立高校の一部の結果を取り上げ、持ち上げる。公立学校の一部の進学実績のみを持ち上げる風潮に違和感を感じます。

前任校での実績が重んじられる

進学校での公募が過熱してくると、人事においては、前任校での進学指導実績が重んじられます。そうすると、自然と、進学校にいる教師中心に公募が回るようになっていくのです。そうすると、A先生のように受験指導に関わっていない教師は、公募上不利な状況におかれるのです。

進学指導ができる力があってもなかなか思うように異動できない。そうすると、A先生は「もういい。諦めよう」となるかもしれません。そして、進学校中心に回る教師と、なかなか希望通りに進学校に行けない教師の間に意識の差が生まれてくることさえあります。同じ高校教師であるにも関わらず、「自分たちは進学校で教えている」、「自分たちは受験指導には縁がない」などといった分断意識です。

少々話がそれましたが、教育行政に携わる方たちには、高校教育全体を見る視野を持ってほしいですね。

専門家としての腕の見せ所

さて、では、A先生はどうすれば良いのか?ここで重要になる考え方は、「教師は教える専門家であり、それは対象を選ばない」ということです。学習意欲が無いように見える生徒であっても、その意欲を引き出すのが教師の力量の見せ所です。

これは、学ぶ意欲満々の生徒対象に授業を展開すること以上に難しいことかもしれません。教材を精選し、教材研究し、言葉を選び、間をとり、こちらに引き込む・・・、また、時には少々の時事ネタも入れるなど。とにかく工夫が必要です。「どのような生徒であっても、自分は教える専門家として向き合う。1ミリでも変化させる」と思うと、A先生の意識は変わってくると思います。

また、いつの日か、A先生が進学校に異動したとします。現任校で生徒たちに真剣に向き合った経験は、そこで生かされることも多いと思います。例えば、進学校にも学習意欲が無い生徒は存在します。周りと自分を比較してやる気を無くしたり、趣味に走って勉強に身が入らなくなったり、不登校になったりする場合もあります。進学校のみを回ってきた教師と、実業高校で学習意欲のない生徒を少しでも成長させようとした経験を持つA先生では、その際の対応力が変わってきます。

まとめ

勤務校が自分に合わないと思ったら、まずは、「自分は高校教師。どのような高校生対象であっても教える専門家だ」という姿勢で臨むことが第一です。そして、その姿勢こそが、今後の教師生活の幅を広げていくことは間違いありません。

勤務校で強みを発揮する方法もお伝えしていきます
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